図説 英国社交界ガイド:エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活 (ふくろうの本)

図説 英国社交界ガイド:エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活 (ふくろうの本) の詳細

この時代が好きではないので興味がありませんでしたが、毎日新聞の書評で、読んでみようと思いました。とても面白かったです。参考図書があるかな？と巻末を見ましたが、日本語のものはそれほどなく、ほとんどが英語の本を著者が翻訳しているので貴重です。社交とは、自分たちのグループ（社交界）によそ者が入ってこないように、なんとも複雑な約束事を山のように作ることの連続なのです。これを知らない人は仲間に入れない、という基準です。そして貴族の中でも中心にいるのは、王様に取り入るのが上手な人たち（美しく、王様の趣味と同じくスポーツや狩りが大好き、話題が豊富）なのです。中産階級が台頭してきて貴族に憧れ、また貴族に近い贅沢ができるようになり、エチケットブックという誰が書いたのか分からない（貴族はこの秘密を教えたくないだろうから書かないはず）似たような本が山ほど出たそうです。今でいう自己啓発ブックや成功の秘訣本のような感じです。何故そのおこないが正しいのか？実は意味なんてありません。女性は親に、結婚したら夫に、何がなんでも仕えなくてはならず、様々な種類の食べ物が出されても、これは淑女らしくないので選んではいけない、もし選んだら「あれを食べるなんてマナーを知らない」と後ろ指さされてしまうのです。どこの国も「女性はこうあるべき」なんていう無言の圧力があるのです。マナーは行いのこと、エチケットは手順のことだそうです。エチケットブックは「こういう時にはこうするべし」ということが延々と書かれています。それが本当なのか嘘なのか（ただ本を売るために書いているのか）も著者は調べています。仲良くもないのに社交界で名前を売るために次々と訪問し、でも迎える相手も実は会いたくないから居留守を使う、訪問したほうは自分の名刺を置いていく、端っこを追っておけば「お留守だったのですぐに失礼しました」の意味だ、などバカバカしいったらありゃしない・・です。どの国にもこういった付き合いの法則はあるのですね。中産階級が事業で成功し、娘を貴族に嫁がせ、生まれた息子や孫が現在なんとか伯爵として生活しています。由緒正しいってどういうのだろう？と笑えてきます。著者のあとがきのとおり階級に疑問をもちました。内情を知るとあこがれも消え、大変だったんだなぁと苦笑いしました。本当にこのグループに入りたいか？と考えた時、お屋敷は素敵だけれどこの人たちと一緒は嫌だなと思いました。華やかなので一見素敵ですがものすごく無駄が多く、でもこれが文化なのかもしれませんね。